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世界で活躍する同窓生からのメッセージ(敬称略)
尾山 淑彦  (昭和56年卒)  メキシコ ・ぺルー
中南米での生活 スリリングな経験


 昭和56年に卒業し今年で63歳になりますが、メキシコに1994年から2010年まで約16年滞在し、ペルーに2014年から現在に至ってます。
この間の、仕事上の少々苦い経験を振り返ってみます。

■ メキシコ・シティ時代

 業務用ゲーム機器、ゲームソフトを日本から持って来てメキシコ、その他の中南米諸国への販売に従事しました。
初めての中南米市場だったんですが、日本では一日に2つ、3つのことを計画してやるところが結構行き当たりばったりで1件も進まないなんてことはザラで、ストレスもたまりますが、何でもありの“おおらかな”ところでした。

まずは、
ある日、分割払いで業務用ゲーム機器を販売した顧客がいるんですが、これからもヨロシクということで、彼がバスをチャーターして従業員全員(+その家族たち)を彼のランチョ(牧場みたいなもの)へ招待してもらい、マリアッチもいて豪勢に歓待されました。
1か月近くして、起訴状がきてなんと「詐欺罪」。
「セニョール・尾山が“いついつ”ランチョに来た折に、口頭で契約の不履行を認めた、これは詐欺だ。」、と。
一週間後、追加で、「おかげで“ウン”百万ドルの損害を被った」と法外な損害賠償の訴状も到着・・・
詐欺罪に損害賠償のダブル。 
結論いうと、負けて、勝って、上告されて最終決着、両案件結審まで2年以上かかりましたが無罪確定&勝訴。
その間、物騒な脅迫電話もあり、家族は、メキシコシティから飛行機で40分ほどに位置する日産さんの城下町(=日本人が多い)といわれていたアグアスカリエンテスへ避難させ、1年ほどメキシコ国内で単身赴任をする羽目に。 

元大手商社出身の本社法務部の部長が「昔、売掛金回収でメキシコ出張に行った若い者が返ってこなかったなあ」と物騒なことを言ってたことも思い出し、神経もやられて文字通り首が動かなくなり、針治療のお世話に。
長くやっていると針も効き目がなくなりましたが、ある日のこと、弁護士から、「日本人は世界一の臆病な民族で脅せばいくらでも金を出す」と言っているといわれ、怒りでカッとして血の巡りがよくなったのか嘘のように回復。
もう裁判勝った時は、大谷選手がトラウトを三振にとった時みたいに、よっしゃー!で、心から「日本人なめんな、ざまあみろ」、でした。

もう1件。
事務所併設の、商品を陳列している倉庫に毎日お客さんが来るんですが、その日午後6時頃にほとんどの客が出払った後で、3人衆が懐から拳銃を。 従業員全員が各々離れてガムテープで身動きとれなくされて座らされ、私は頭に銃を突き付けられたままあちこちと引き回され、商品、パーツ、社有車の他、金庫からは“ウン”万ドル持って行かれ(業種がらでしょうか結構現金取引がありました)、あげく拳銃の下部分で胸、肩、頭を殴られて顔面はかなり血だらけ状態。 深夜に解放され、1時ころに警察へ。
医務室でレントゲン検査やら手当やらで明け方まで、もう精神的にも肉体的にもヘトヘト。 強盗罪に傷害罪つけてもらって、翌日から事情聴取。 弁護士からは、多額の現金が奪われたことは供述するな、あきらめた方が良いと口止めされました。現金扱っていることがわかると警察と関係のある強盗が襲ってくる危険があるため、とか。 
尚、よくある話ですが、翌日から警備員は出社せずでした。

当時いた領事さんは、愛知県警捜査1課から外務省に出向してメキシコに赴任されてたんですが(メキシコの領事は、査証などの仕事もあるんですが、大使のボディガードが主な任務と聞きました)、彼が、メキシコの警察も現場で動く刑事の多くは優秀で犯人検挙の1歩手前まではいくんだけど、その手前で身内から邪魔が入ることは珍しくない、と言ってましたね。
 
マリアッチの歌うランチェラは、詩は切なく物悲しんだけどメロディーは心地良いものが多くて大好きです
 
■ リマ

日用品、食料、飲料を日本から仕入れてペルー、ボリビア、ブラジルに販売しています。
昔インカ帝国があったところで商習慣もメキシコとよく似てます。
政治社会はどうかというと、最近の世論調査でボルアルテ大統領の支持率は5%以下とかなり低めで(ていうか低すぎやろ)、とにかく政治家、役人達の腐敗がひどい。 また、ベネズエラからの移民が増えて治安が悪化の一途、そしてエンゲル係数が40%以上ともいわれ食べるのに精いっぱいの貧困層も多いんですが、銅、鉛などの鉱山資源、豊富な農水産物の輸出で外貨を稼いで、経済的には南米で超安定しているという不思議な国。 

ここでの苦い経験です。
マネーロンダリングの疑いで検察から事情聴取を受けたことがあります。
日系人の元大統領、フジモリ氏がらみの倉庫を賃借していたことに端を発した、全くのとばっちりだったんですが。
弁護士に、検察の想定質問リストの虎の巻を作成してもらって、どう返答すべきか使う単語までレクチャーを受け、出頭日までの1か月間は、毎日30分ほどの特訓。その成果もあってかなんとか無事に終了。
ちなみに、資金洗浄は刑法マターで、出頭した当日は検察2人に3時間ほど事情聴取をうけましたが、メキシコ時代の苦い経験もあり、冷や汗をかくこともなくまず冷静に対応できました。
心配だったのは、検察にいちゃもんつけられていつまでも呼び出されることです。 さっぱり身に覚えのないことでも、金ずると思われると、長い間出頭させられイジメられますので。

もちろん両国とも法治国家です。ルールにもとづいてリーガルにやるのが基本ですが、何事も例外はあり(例外が多すぎる)、イリーガルにかつ暴力にうったえられるともうお手上げです。
裁判官などへの謝礼も馬鹿になりませんし(高額になるとそれはそれでイリーガルな行為ですが)。


 
  ペルーといえばアルパカでしょうか
 
ペルー/ボリビア 国境の街、海抜3800m
薬もコカの葉も効かずでもう往生しました
贔屓のサッカーチームは2部。でも肉弾戦で面白い
試合前に新聞紙やらいっぱい切り刻んで紙袋に 

訴訟案件を両国合わせて30件以上対応しましたが(ほとんどが訴えられたケースです)、負けたり勝ったり控訴したりされたりで、訴訟対応ずっとやってました。
外国企業、外国人(他人を空気のように信頼する日本人は(私は日本社会の美徳だと思います)組みやすしとなめられるということがあります)ということもあり、賠償金の要求額も謝礼も、「おいおい桁が1桁ちがうだろう」なんてこともしょっちゅう。
気持ちが折れそうになった時は、怒りと家族の笑顔をパワーに踏ん張りましたが、金のからみなしに親身になって助けてくれた現地の人たちは大勢いましたし、彼らへの感謝の思いはずっと心にあります。

なんかの縁があって長いこと中南米にかかわっていますが、もちろん楽しい思い出も数多くあります。
まだいますので、これからもいろいろとあるかも知れません。

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