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メディアに登場したホットな同窓生をご紹介(敬称略)
白神由紀江 (昭和44年卒)

創作への思い


表彰式 前列の着物姿が私です。
 この度、「ソッカー先生とホタルの海」で、第二十五回岡山市文学賞、岡山市民の童話賞最優秀賞をいただきました。これは、第十三回に続いて二度目の受賞です。とても光栄に思っています。

 一度最優秀賞を受賞したので、もう応募できないと思っていたのですが、第二十五回という節目の年を記念して、広く過去の受賞者も含めて応募できるという知らせを受け取り、早速応募しようと思いました。

 ちょうどその頃、山陽新聞で、数知れないほどのヒメボタルが明滅する幻想的な写真と出会い、それが深く心に残っていました。また、国語教師として図書館活動にも関わっていることから、図書館を舞台にした作品を書きたいと思っていましたので、その二つの想いを合体させた作品ができないかと考えたのです。そのとき、この物語の大筋が浮かびました。なお、「そっかー」とは息子の口癖で、それを聞くたびに、心がほのぼのとした想いに満たされていましたので、その言葉も生かしたいと考えました。

2009長崎へ転勤した息子のところへ
 受賞作の「ソッカー先生とホタルの海」は、工業団地の建設で自然が破壊された小さな村の小学校に赴任してきた、図書館司書のみずき先生が主人公です。彼女の口癖は「そっかー」。それは、子どもたちを真っ直ぐに信じて受け入れる言葉で、「ソッカー先生」と呼ばれる所以なのです。その先生のもとに、彼女が見たがっている、かつて村で見ることができたホタルが海のように飛び交う「ホタルの海」を見せようと現れた謎の少年「キチジ」。彼の案内で、先生と、彼女を慕う少年たちは、「ホタルの海」を見ることができたのです。その体験から、少年たちは美しい自然を取り戻し人々に喜びを与えたいと願う気持ちに目覚め、川をきれいにしようと思い始める、そういった内容の作品です。

 童話を書き始めたのは、高校一年生の時、文学部に入部してからです。『朝日文学』に掲載される作品を書くために、夏休みが来る度に、作品を必死で書き上げたことを懐かしく思い出します。
 文学部の、とある先輩に「あなたは、童話を書くといい。」と言われたことがありました。考えてみれば、空想にふけったり、非現実的なことを夢見たりすることが好きでした。

 本格的に創作し始めたのは、四十歳を過ぎてからです。何かの縁で、山陽新聞に掲載されていた随筆「放課後に」の、執筆者の一人に加えていただけることになり、国語教育の中で考えることを書くようになりました。その結果、記事を読まれた方からお手紙をいただくことが多くなりましたが、その中に、落合に住むMさんという方がいらっしゃいました。Mさんは、かつて落合町議会議員を務めた方で、地域活性化のために、落合で初めてリンゴ作りに取り組まれたのです。その努力の軌跡を記した著作や、夫婦で心を合わせてがんばってこられた過程で、はからずも奥様を亡くされた悲しみをつづった随筆などを送ってくださり、本当に胸を打たれました。そこで思い浮かんだ童話作品が「リンゴのおじいちゃん」でした。

 交通事故で父親を亡くし、母親と田舎へ越してきた少女と、妻を亡くした悲しみを抱えながらリンゴ作りをするおじいさんとの交流を描いた作品です。二人は互いを心の支えとし、少女はやがておじいさんの跡を継いで、リンゴ作りをしようと思い始めます。その作品で第十三回岡山市民の童話賞最優秀賞をいただきましたが、Mさんもとても喜んでくださり、感激もひとしおでした。その後、高齢者を対象にした「ハッスル大学」で、Mさんと二人で講師になり講演したことも、懐かしい思い出です。
 
新年謡の会 二列目右から三人目が私です。
 私の書く童話には、必ずと言っていいほど「おじいさん」が出てきます。それは、私自身の、祖父への敬慕と感謝の気持ちの強さからだと思います。これから書く作品にも、「おじいさん」を数多く登場させたいと思っています。
 
 また、私はこれまで随筆もかなり書いてきましたが、今後は、岡山において歴史的な位置づけが大きいながらも埋もれた人たち、例えば、他に先駆けて洋学を学び、郷里に帰って最新の医術で世のために尽くしながらも、その業績が知られていない人たちなどに視点を当て、少しでもその存在に光を当てて、書き記していきたく思っています。

 ともすれば人は、光り輝くものに目を奪われがちかもしれません。でも、私はなぜか、蔭に隠れた存在に目が向きます。真に価値あるものとは何か、文章を通して追究していきたいと考えています。
 
後ろが私の詩です。
朝日新聞掲載写真。
 詩は、岡北中学校に勤務した時に、校門横の掲示板に何かを書く係になったことから、毎月自作の詩を書き始め、京山中学校に転勤した後も、今度は毛筆で模造紙に書いて掲示し続け、五年間書いた詩の集大成として一冊にまとめ、新風舎出版賞に応募しました。運よく奨励賞をいただき、「心新と〜四季のメッセージ〜」という題で出版の運びとなりました。その後、新風舎が倒産したため文芸社が引き継いでくださり、現在に至っています。今も、子どもたちの心の成長を願い、毛筆で書き続けています。この四月から、他の学校からも書いてほしいとの要請があり、その学校へも毛筆で書いた私の詩を、掲示していただいています。
 
 これからも、「書く」ことを通して多くの人と関わり、少しでも人生をより深く、充実したものにしていくべく努力していきたいと思っています。



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