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国内で活躍する同窓生(敬称略)
友國 さやか(平成17年卒) 東京都在住

中途半端が零と同じなら

昨年のサマーコンサートツアー終了後、
下関の海峡ゆめタワーにてオケのみんなと。筆者前列左
 朝日高校を卒業して二年。早二年、などと書くと、これをご覧になっている偉大なる先輩方には笑われてしまうかも知れません。それでも、そんな風に高校時代を遠く感じてしまうには充分に、いま私の生きる時間の流れは速い、そう感じています。
 しかし、やっていることと言えば高校時代とさほど変わりはありません。いまもむかしも、私の生活の中心かつ大半を占めているのは部活動、オーケストラです。

 朝日での三年間を振り返るとき、切っても切り離せない存在なのが部活です。高一の春、吹奏楽部に入部してからというもの、私の生活は文字通り部活漬けとなりました。朝練に始まり、合間に授業があり、放課後の部活に終わる一日。部室には「中途半端は零と同じ」のスローガンが掲げられ、先生方は無責任に「文武両道」を称えられる。幸か不幸か驚異的なポジティブシンキングの持ち主である私は、深く悩むこともなく、悩んでもすぐにそれを忘れることで日々をやり過ごしていました。
 私が高二になると、部活もいつの間にか管弦楽部となりました。あの時の複雑な感情は忘れていませんが、これこそが私とオーケストラ(通称、オケと略します)との記念すべき出会いだったのです。しかし当時の私はそんなことに気づく術もなく、副部長業や不可避となってきた勉強に追われていました。
 高三の一年間はさすがに部活からは離れていましたが、オケとして成長してゆく後輩たちの姿を見るにつけ、うらやましく感じていたように思います。そして春、晴れて大学生になる権利を得ました。
2007年1月の定期演奏会の様子です。
 
 大学の新入生の悩み事といえば、初めてで戸惑うことばかりの履修計画作りとサークル選びではないでしょうか。私も分厚いシラバスを前に何時間も悩みましたが、それ以上に時間を要したのはサークル選びです。東京大学には膨大な数の部・サークルがあり、吹奏楽だけで三つ、オケに至っては五つもの団体が存在します。最初は吹奏楽に戻ることも考えましたが、やはりオケを、そして高校時代は「二度とこんなきつい部には入らない」と決意していた筈が、結局最も厳しいといわれる団体を選んでいました。それが現在所属する東京大学音楽部管弦楽団(通称東大オケ)です。

  
毎年五月祭では、安田講堂において特別演奏会を行います。
 東大オケは、1920年発足という長い歴史をもち、約140名の団員を擁する大規模な学生オケです。夏の演奏旅行、冬の定期演奏会、各地の小学校での音楽教室など多様な活動もさることながら、音楽に対する熱い思いを持った人たちばかりであるというのが最大の特徴だと思います。それゆえ練習も決して甘いものではありませんし、演奏水準もそれなりのものが求められます。妥協を許さない姿勢は、厳しい。週二、三回の全体練習の他に個人で練習し、オケのためにバイトをする、そんな生活です。

 正直なところ何度も辞めたいと思いました。しかし、今に至ります。それは、言葉にすると凡庸ですが、音楽の素晴らしさ・オケの素晴らしさをどんどん知るようになり、その音楽を通じて更に素晴らしい仲間たちに出会えたからではないかと思うのです。偉大な作曲家たちが作り上げた曲の数々は、国や時代を超えて、私たちに訴えかけてきます。それを聴くだけではなく、自分たちで演奏できる喜び。何十人もの人間が、音でひとつになれる瞬間。苦しい練習の後、満場の客席に向かって舞台に立つ本番。このすべてが音楽の罠となり、私を捉えて放さないのだと思います。そしてそれらを通じて、尊敬すべき、あるいは研鑽しあえる、心から信頼できる仲間を得ることができました。それは朝日時代の友人についても言えることで、特に部活の友人とは頻繁に連絡を取り合っています。

いつもとは違うアングルから眺める安田講堂をどうぞ。

 こんなオケ三昧の私ですが、本業は文学部の学生です。この春、文学部行動文化学科社会学専修課程に進学し(東大では所属する学部・学科が決まるのは三年の春です)、憧れだった本郷キャンパスに通う毎日です。東大に来てよかったと思うのは様々な出会いに恵まれていることですが、やはりオケでのそれに勝るものはないなぁ、なんて思ったりもしています。安田講堂前で写真を撮る修学旅行生に朝日の後輩、そして数年前の自分の姿を重ねながら、ホルンを背中に自転車で駆けぬける、そんな毎日です。
 「中途半端は零と同じ」という言葉を、卒業式の答辞で部分的に否定はしましたが、これは学生時代の特権を言い表したものかもしれない、と最近感じるようになりました。学生時代は、零ではない何かを追求する最後の機会である、とは言い過ぎでしょうか。兎にも角にも私は、オケと共にホルンと共に、社会学を学びながら、“半端じゃない”学生生活を送りたいと思っています。


 最後にこの場をお借りして、当団演奏会の宣伝をさせていただきたいと思います。
 当団では毎年夏に演奏旅行を行っており、今年は東京・神奈川・京都・高松・広島で公演を行います。
会場・開演時間等詳細はこちらの通りです。
チケットお申込・その他詳細につきましては、当団公式HP(http://webs.to/todaiorch/)をご覧下さい。

 なお、私は今回、高松公演の担当を行っております。高松公演は十年ぶりで中四国出身団員も少なく、大変厳しい集客状況です。お忙しいところとは存じますが、ひとりでも多くの方に足をお運びいただき、私たちの演奏を聴いていただけたらと願っております。みなさまと会場でお会いできますことを、団員一同、心よりお待ち申し上げております。

本郷の憩いの場、三四郎池へと通じる小道です。
      

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